研究概要 |
研究成果の概要を以下60年度,61年度に分けて示す。 (1)TEMとScanning Auger Microscope (SAM)による複合分析(60年度)。 我々はTEM法を基礎に固体の化学結合構造を原子的スケールで評価すべく同一試料の同一分析点においてTEMおよびSAM分析を行い、物質の原子的構造,化学組成,および電子状態とを統一的に評価する複合分析法を開発した。本方法においてはTEM用の薄片化試料を、TEM,およびSAMの両方に用い同一試料条件において構造・組成・状態分析を行った。本方法の応用として(A)Al-Cu系合金中のG.P.ゾーンの形成過程(B)アモルファスFe-B合金の電子構造(C)三元合金半導体の構造的乱れと電子状態(D)Zr系金属間化合物の水素又は酸素吸蔵によるアモルファス化などを詳細に調べた。 (2)micro RHEEDとmicro AESの有機的結合によるmicro Diffrwction Scanning Auger Microscopyの確立(61年度)。 従来のオ-ジェ電子分光法では物質の結晶学的情報との相関が明確でなくオージェ価電子スペクトルと物質の原子的構造との対応が十分得られなかった。そこで本研究では収束電子線によるRHEEDパターンにより、予め、試料表面構造に関する知見を得た上で、更にその電子線をオージェ過程の一次励起源として用いることにより、入射電子線の方位、回折電子線の強度との相関においてオージェ電子スペクトルを得、解析する手法を確立した。本方法の応用としてSi(001)再構成表面特有の表面電子状態や、アルゴンイオンをそれに照射して表面構造に乱れを生じさせた状態での表面電子状態に関する情報をバルクの電子状態に関する情報と区別して評価することに成功した。以上2年間の研究を総括し、電子線回折法とオージェ価電子分光法による複合分析法は固体中の格子欠陥の挙動,特に局所的電子状態を解析する非常に有効な方法であることがわかった。
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