研究概要 |
イオン照射した合金材料中のミクロ組成変化を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS,TN-2000型)を用いて定量的に評価するための純金属の参照X線データの蓄積及び空間分解能・精度の検討を行った。この結果、分解能として20nmが得られ、オーステナイト鋼の主構成元素濃度について1wt.%以内の分析精度が得られた。イオン照射実験は、チタン添加オーステナイト系ステンレス鋼(PCA)とフェライト/マルテンサイト二相鋼(JFMS)について行った。PCAは400KeV【Al^+】イオンのみ及び50KeV【He^+】との二重ビーム照射、JFMSについては、400KeV【Al^+】あるいは【Ar^+】イオン照射をそれぞれ50dpaまで行い、電子顕微鏡によりミクロ組織観察をすると同時にEDSによって微小領域の組成を分析した。 PCAに関しては以下の知見が得られた。【◯!1】結晶粒界、イオン照射下で生成したキャビティなどの点欠陥シンフ周辺のミクロ組成分析の結果、溶質原子のサイズファクターで説明しうる照射誘起偏析が確認された。この中でマンガンの濃度低下を見い出したことは、照射下の相安定性の変化を考える上できわめて重要である。【◯!2】照射下の結晶粒界移動に伴う特異な組成分布と列状のキャビテ、生成との関連性を明らかにした。【◯!3】イオン照射下に特有のニッケルに豊んだ非平衡相の生成を確認し、その組成のミクロ組織変化に対する効果を検討した。【◯!4】イオン照射によるカスケード損傷下のMC型析出物は、予想に反して組織的・組成的にきわめて安定性が高いことが明らかになった。また高温照射中の析出物の変化には照射誘起偏析が大きく影響していることが判明した。 フェライト系鋼はオーステナイト系鋼と比べ結晶粒界周辺の照射下偏析量が小さく、また析出物の安定性も大きいことが結論された。
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