研究概要 |
ピリジニルラジカルニ量体から光開裂して生成するラジカルが示す化学誘起電子スピン分極(CIDEP)現象およびピリジニルジラジカル系の化学が画期的な進展をみせていると同時に化学誘起核スピン分極(CIDNP)の測定が可能になり、新しい成果が生れつつある。さらに時間分解ESR法を他の光化学反応系に応用して新規の成果を挙げたことを付言したい。 1.スピン分極保持励起状態エネルギー移動の発見とその展開。1,4-ジメチル,1,2,6-トリメチルピリジニルラジカル等がそれらの二量体から一重項ラジカル対を経由して光開裂をみせることが明らかになったが、それらの系に三重項増感剤を添加して実験した結果、三重項を前駆体とするCIDEPスペクトルが得られた。これは、励起状態で増感剤から二重体基質にスピン分極を保持したままエネルギー移動が起こったことを実証しており、溶液系では前例のない成果として高く評価されている。この過程を更に実験系を拡大し、物理化学的解釈を合わせて研究として現在進めている。 2,1,1´-エチレンビスおよび1,1´-トリメチレンビスピリジニルジラジカルとそのサイクロマーの化学の確立。1967年にはじまったこれらジラジカルの化学が本研究によって明解な形で確立し、新しい平衡系として、また新しい光化学反応として地歩を固めた。成果は2報の報文として公表され、さらに準備中である。 3.時間分解ESR法のフォトエノール検出への応用。本研究による装置の整備によっていろいろな実験が可能になってきたが、その一つ、Norrish【II】型光反応中間体三重項状態が世界ではじめて検出されたことは、時間分解ESR法の今後の広範な活用を約束するものである。その成果は現在公表印刷中である。
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