研究概要 |
本研究の目的は、低エネルギー電子線のファン・デル・ワールス分子による散乱実験(電子エネルギー損失スペクトルおよび負イオン生成スペクトルの観測)を行なうことによって、ファン・デル・ワールス分子への特異的な電子付着過程を調べ、その特異性を明らかにしようとすることである。本年度の研究計画は、昨年度に達成された成果を踏まえ、(1)超音速ノズルビーム源の作製とその真空槽への組込みおよび調整を行なう,(2)マスフィルター型質量分析計を真空槽に組み込んで調整を行なう,(3)超音速ノズルビームの質量分析を行ない、ファン・デル・ワールス分子(【O_2】・M)(ここでMは【O_2】,Ar,【N_2】,【H_2】,【C_2】【H_4】など)の種類と密度を測定する,ことであった。以上の計画に対し実際には以下の通り行なわれた。(1)超音速ノズルビーム源は単一細孔をもつ0.5mm厚の白金製電子顕微鏡絞り板(20〜100μmφの5種を作製)によるノズルと0.65mmφ孔の銅製ホーン型スキマーによって構成されているものを作製した。ノズルはスキマーとの軸合わせのため、真空槽の外から縦・横・高さの3軸の調整が可能である。新たに電子スペクトロメーター用の差動排気真空槽が衝突槽の中に組み込まれ、ノズルビームのような大強度分子ビームを安定に使用でき、しかも電子スペクトロメーターを衝突槽よりも一桁以上高真空の条件で操作できるようにした。その結果、電子のArによる非弾性散乱強度の測定から高密度の超音速ノズルビーム源として使用可能であることが確認された。(2)マスフィルター型質量分析計は質量数400まで使用できる市販品(日本真空,MSQ-400)に本研究にあわせて詳細に変更を加えた特別仕様であり、正負イオンの両方の測定がそれぞれアースに対して浮動条件で可能であるものを設計し作製した。また生成イオンを効率よく分析管に引き込むための3段レンズを備えた。(3)も近日中に行なわれる予定であり、以上、ほぼ計画通り行なわれた。
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