研究概要 |
本年度前半は主に既設の日立R-6M型単収束質量分析計を用いてインビームEI方式によるイオン化の特性とその気相反応を二,三の生体成分について検討した。後半では新に日立M-80A型二重収束質量分析計が設置されたので、第四アンモニウムイオンの気相分解方式をB/E一定および【B^2】/E一定リンク走査法を用いて検討し、クラスターイオン内でイオンー分子間反応がおきていることを確認し、凝縮相における反応との類似性もみられた。現在更に各種生理活性物質についてこの方式による気相単分子分解挙動を明らかにし、微量物質の構造研究の新方式を確立することを検討している。以下既に発表した研究について述べる。 1)ヌクレオシドのインビームEIスペクトルが分子イオン確認に有効であることを示した。従来の電子衝撃スペクトルでは殆ど観測されない分子イオンが、インビーム法を用いることによりM【H^+】イオンが基準ピークとなりうる程強く観測されること、及び塩基と糖の混合物のインビームEIスペクトルが対応するヌクレオシドのスペクトルと類似していることから、イオン-分子間反応の存在を明らかにした(質量分析誌に発表)。 2)生体膜の構成々分であり、その生理作用が注目されているフオスファチジルコリン類のインビームEIスペクトルを検討し、アシル基の位置異性が、特定ピークの相対強度にもとづき判別できることを示した。生体膜構成分の構造研究に重要な手法を提供することになろう(Org.Mass Spectrom.誌に発表)。 3)生体成分であるコリン、逆性石けんづある長鎖アルキル第四アンモニウム塩のインビームEIスペクトルを検討し、第四アンモニウムイオンの電子衝撃分解過程を明らかにした。MIKESの手法を用いて気相反応を確認した(Chem.Pharm.Bull誌に発表)。
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