研究概要 |
大別して次の3つの研究を行った。すなわち、1.二核錯体の合成,構造および性質,2.キュバン型クラスターの合成,構造および性質,3.t-アルキルシランと遷移金属錯体との反応による二核と三核錯体の合成である。1.ペンタメチルシクロペンタジエニル(【Cp^※】)を含む[【Cp(^※_2)】【Fe_2】【S_4】](【1!〜】)を得た。【1!〜】は空気酸化により[【Cp(^※_2)】【Fe_2】【S_3】【O_2】]に変化するが、【NH_4】【PF_6】の共存下で電気化学的に酸化すると[【Cp(^※_2)】【Fe_2】【S_4】]【(PF_6)_2】(【2!〜】)を与える。【2!〜】の構造解析から、【1!〜】において互いに直交していた2つのジスルフィド配位子がほぼ平行になるよう向きを変えていることを見出した。2つの【Cp^※】をトリメチレン鎖でつないだ配位子を合成し、その鉄のカルボニルならびに硫黄錯体も得ており、これらについても構造ならびに物性を調べている。 2.シクロペンタジエニル(Cp)を含む[【Cp_4】【Fe_4】【Se_4】]【(PF_6)_3】【CH_3】CN(【3!〜】)を高収率で合成することに成功した。【3!〜】はキュバン骨格を形成する価電子が17個の【M_4】【X_4】型クラスターの最初の例である。構造解析の結果、【S_4】-【4!~】軸をもつ4面冠4面体型構造であることがわかった。【3!〜】は電気化学的に4+から0価までの1電子酸化環元を行うことができる。セレンの代りに硫黄を含む[【Cp_4】【Fe_4】【S_4】]クラスターも4+から0価までの1電子酸化環元を受けることがわかった。Cpにトリメチルシリル基を1つずつ導入していくと、キュバン型クラスターの生成が次第に困難になり、クラスターの形成に配位子の立体障害の程度が微妙かつ重要な寄与をしていることがわかった。 3.トリヒドロシランは3つのSi-H結合を持っており、金属錯体との反応により最高三核までの錯体の生成が期待できる。そこで、ヒーアルキルシランを合成し、熱および光反応により二および三核のコバルトカルボニル錯体や鉄の二核錯体を得た。二核錯体にはまだSi-H結合が残っており、混合金属クラスターへ導びくことができよう。
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