研究分担者 |
西川 直宏 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (70135408)
鈴木 一孝 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (10024184)
光田 武 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (40024195)
福田 功一郎 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (90189944)
大里 斉 名古屋工業大学, 工学部, 講師 (20024333)
SUZUKI Kazutaka Nagoya Institute of Technology Professor (70135408)
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研究概要 |
ポルトランドクリンカー中のエーライトと呼ばれる珪酸三カルシウムの複雑な固溶体鉱物を主要対象として, その生成過程と微細組織との関係を追究した. エーライトの結晶成長は間隙質液相を溶媒とする高温溶液成長であり, その成長モードには, 環境相液体の取り込みの有無によって不安定と安定成長の2種が区別された. さらに核形成頻度を考慮することにより, エーライトの結晶成長環境が3つのカテゴリーに大別され, そのおのおのは, 液体, 気体, 固体包有物, 結晶粒径, 形態, 不純物および欠陥濃度, 相状態などの点でそれぞれ固有の微細組織を示すことが導かれた. 成長時における成長モードの変化は, 各種微細組織の相違をもたらし, その結果累帯構造が生じるクリンカーのプロセス条件は, 微細組織の面からは結晶の成長環境を規定する外部変数とみなすことができる. 上記の理論ないし基礎的知見は, 以下のようなクリンカー製造上の具体的な問題に応用が可能である. 少量成分のエーライト微細組織への影響:クリンカー液相中の少量成分は, 粘性や表面張力など液体の物性を変えることにより, エーライトの結晶成長環境, さらには微細組織に影響を与える. その効果は, 少量成分の塩基度, 酸度もしくは陽性元素の場の強さ, あるいは電気陰性度とともに系統的に変化し, 予測が可能となった. 回転キルン内におけるクリンカーの造粒:クリンカー粒子の内核と外周部におけるエーライトの微細組織の顕著な相違に着目して, 液相がまだ生成されない遷移加熱域における原料粒子の粒度偏析を結論した. これにより回転キルン内の造粒に関わる諸現象を矛盾することなく統一的に説明できた. 今後の展開:エーライトの結晶成長過程へのクリンカー粒子の転動等動的刺激が及ぼす影響, 液相の酸素活量の測定による少量成分の影響の定量的評価等が主要課題である.
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