陰極に析出する金属の形態の電解液組成、陰極過電圧・電流密度などによる変化を定量的に検討するため、静止電解液中に垂直平板銅電極を設置して電解を行い、陰極面近傍における自然対流を伴うイオンの移動速度をホログラフィック干渉法で測定し、また電析物の形態をSEMで観察した。0.6MCuS【O_4】-1.85M【H_2】S【O_4】水溶液および0.6MCuS【O_4】水溶液を用い、陰極電流密度10mA/【cm^2】で1時間電解を行い、電析物の形態を観察した。その結果、前者の電析物は丸味を帯び部分的にピット状の孔があり、結晶はきわめて微細であるのに対し、後者は(111)面と思われる結晶面が大きく成長し、その表面にサブミクロンの結晶核と思われる析出物が点在していた。このように硫酸の添加によってfcc金属の析出形態が大きく変化することを確認した。 次に0.05MCuS【O_4】水溶液中でパルス電解を行い、パルススケジュールによる電析物の形態の変化を検討した。ホログラフィック干渉法による測定から、陰極面近傍にはIblらのいわゆる"二重境界層"が生じ外側の定常濃度境界層の内側にはパルススケジュールによって変動する非定常濃度境界層が存在することを確認した。また陰極自然対流によってイオンの移動速度が変化することを考慮して、パルス電解の通電時の陰極表面濃度と同一濃度を与える直流電解の電流密度を換算電流密度【i_c】と定義した。現在までの実験条件では、デューティーサイクルγが小さくなると【i_c】も小さくなるが周期を短かくしても【i_c】はある程度以上小さくならないことがわかった。また一定のγの下では、通電終了時の陰極表面濃度が低い程、濃度回復量も大きいことを認めた。さらにγが0.1ないし0.5、かつ平均電流密度【i_a】が6mA/【cm^2】以下の範囲では【i_c】は【i_a】の約半分であり、電析物の結晶は【i_c】の低下とともに微細化した。なお現在超音波干渉計は最終的な調整を行いつつある段階で、調整終了後、電析物の観察を開始する予定である。
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