研究概要 |
新しい機能の発現を複合化によって求める場合、マトリックス(M)と分散相(F)の界面は重要な働きをする。従来のセラミックスにおける複合化では、Fの大きさは粒界の大きさのレベル即ち数μm程度が限界であり、この場合その機能にはMとFの各性質には加成性がみられ、複合則が成り立つ。しかし、Fの大きさが数100Å程度になると複合則では予期されないような機能が現われる。これはM/F界面の効果である。本研究では通常行なわれているMとFを混合する複合化ではなく、原料に気体を用いる化学気相析出(CVD)法によりFの大きさが数10〜数100Åの均一な分散構造を有する複合セラミックス(in-situ複合セラミックス)を合成することを試みた。本年度試みた系は、Si-C系,Si-C-Ti系,Si-C-B系である。いずれの系でもマトリックスはSiCであり、分散相はそれぞれC,TiC,Bである。合成に用いた原料はSi【Cl_4】蒸気,【H_2】ガス,Ti【Cl_4】蒸気,B【Cl_3】蒸気である。分成温度(Tdep)は1300°〜1800℃、炉内全圧力(Ptot)は30〜760Torrの範囲で変化させ、原料ガスの濃度比も種々変化させた。SiCにわずかなCを複合化したSiC-C系in-situ複合セラミックスでは、耐摩耗特性が一般のSiCより特に優れていることを見い出し、セラミックエンジン用シリンダー内壁材料として有望であることを明らかにした。この材料の微細構造については高分解能TEMで調べ、他に見られない積層欠陥が多量に存在することを認めた。またSiC-B系in-situ複合セラミックスでは、破壊靭性値がBを含まないものと比べて約2倍の値(約6MN/【m^(3/2)】)が得られ、高強度高靭性セラミックスとしての応用が期待される。しかしこの材料中でのBの存在状態についてはまだ確定されるには至っていない。SiC-TiC系in-situ複合セラミックスではTiC粒が微細分散していることを見い出し、各々の結晶格子間の整合性について検討を行なっている。
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