研究概要 |
高純度のキチンを調製し部分脱アセチル化、ジヒドロオキシプロピル化(DHP)、カルボキシメチル化(CM)及びO-アセチル化(O-Ac)等の化学修飾をフーリエ変換赤外分光装置で追跡し所期の置換度のキチン誘導体を得た。これら誘導体から繊維を調製しリンパ球との相互作用について研究した。キチン繊維ではリンパB細胞とT細胞との間の選択的相互作用を見出せなかったが、化学修飾すると選択性が高くなる事を見出した。特にCM-キチン繊維はB細胞に高い親和性を示した。この研究で繊維表面をあらかじめビーム照射形表面処理装置で処理して滑めらかであることを確認してから研究を行った。表面に吸着したB細胞とT細胞の比はキチン(1.1),DAC(1.6),DHP(1.9),CM(3.2),O-Ac(2.3)であった。リンパ球との親和性が化学修飾により高められることが明らかになったので、これら誘導体を用いて免疫抗腫瘍活性について研究した。リンパ球選択性の高かったCM-キチンの免疫抗腫瘍性指標(腹腔マクロファージ活性化度)はβ-1,4グルカンでは従来見られなかったほど高く且つCM化度依存性と生体内消化速度との間に関連性が見出されたことからCM化の位置特異性と生物活性への寄与が示唆された。アーリエ変換赤外分光装置で調べたところキチンを構成するN-アセチルグルコサミン残基上のC-6位にCM化が起こると抗腫瘍性が高くなるがC-3位にCM化が起ると逆に活性は低下することが明らかになった。またCM化することにより抗体産生を促す経路を活性化すると思われているマイトジェン活性が高まることも明らかになった。この特性は他のキチン誘導体には見出されない。この理由はキチン分子表面の負電荷分布あるいはCMの水溶液中での分子形態に依るもので円二色性旋光度計を使って研究中である。
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