研究概要 |
細胞性粘菌は単細胞の土壌性アメーバでバクテリアを食べて2分裂によって増殖する。 バクテリアがなくなると数万の細胞が仕合して多細胞からなる集合体を形成し発生期に入る。 そして、 独特な形態形成をへて胞子と柄細胞からなる子実体を形成する。 発生に要する時間は22℃で通常24時間であるが、 この時間は遺伝子によってコントロールされているものと思われる。 この想定のもとに、 まず発生時間の正常な突然変異体を分離することを試みた。 その結果、 発生時間が正常の2/3(16時間)に短縮された突然変異体が分離され、 遺伝解析の結果から単一の劣性遺伝子rdeによってコントロールされていることが分った(発表済)。 この突然変異体を用いて、時間をコントロールする遺伝子の構造とその作用機構の研究を始めた。 まず、 1. 細胞性粘菌での宿主-ベクター系を確立することを目的として、 野外から多くの系統の細胞性粘菌を採取し、 プラスミドの有無を調べた。その結果、 プラスミドpGF1(2本鎖DNA)を発見、 単離した。これに選択マーカーとして他の粘菌の系統株のもつシクロヘキシミド抵抗性の遺伝子cycAを組み込み、 さらに、 シャトルベクターとするため、 大腸菌のプラスミドpBR322とつなげることを試みた。 pBR322は容易に粘菌プラスミドとつながったが、 マーカー遺伝子の組み込みにはまだ成功していない。 次に、 2. プラスミドpGF1の全塩基配列(4,500)を決定した。 その結果、550と551対のインバーティドリピートの存在を明らかにした。 現在、 これら配列の機能、また他の遺伝子や複製開始領域など粘菌プラスミドの構造と機能を詳細に調べている。 さらに、 3. プラスミドDNAを粘菌細胞内に効率よく導入する方法の開発を行った。 從来の塩化カルシュウム法の改良に加えて、 細胞に高電圧を加えてDNAを取り込ませる方法も試みている。
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