研究概要 |
一昨年度までの研究によって,バッタにAdipokinetic hormone(AKH)を注射すると,リポホリンに多量のジグリセリドが積み込まれ,その密度が低下し,同時に血液中にフリーの状態で存在しているapo-IIIがリポホリンに結合すること(リポホリン1分子に9分子のアポIIIが結合する)ことを明かにした. そして,さらにapoIIIの精製法も確立した. そこで,本年度(昨年度より継続して)は,精製されたリポホリン,精製されたapoIII,AKHと体外に取りだしたバッタの脂肪体とを試験管内でインキュベートし,生体内で観察された上記のAKHの作用をin vitroで再現させ,KIHの作用機構の解明へ一歩前進を試みた. 昨年度は,この試みは不成功に終ったが,本年度に至って,漸くこの実験に成功し,AKHの作用をin vitroで再現することができた. その結果次のことを明かにすることができた. 1).AKHの存在下で,リポホリンに5〜8倍量のジグリセリドが積み込まれ,リポホリンの密度は1.21→1.065へと低下する. 2)apoIIIが充分量存在すると,in vivo同様,9分子のapoIIIが結合する. 3)in vivoと同様,リポホリンの分子サイズは増大し,不均一となる. 4)AKHの作用の発現には,Ca^<2+>が必須である. 5)apoIIIの不存在下では,AKHの作用は全く発現しない. 6)AKHの発現は,十分量のapoIIIが存在する限り,all or nothingである.7)apoIIIの作同は,十分量のAKHが存在する限り,all or nothingである. 以上の結果は本研究を進めるにあたって,基本的にきわめて重要な知見であり,今後の研究の進展が期待される.
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