筋細胞の分化に伴い筋構造タンパク質が発現されたあと、筋原繊維構造が構築される仕組みを知ることを目的として、以下のことを明らかにした。 1.アクチン繊維形成の調節:筋原繊維形成前の幼若骨格筋細胞には、繊維に組み込まれない非重合性アクチンが多量に存在することを見いだした。そこで、幼若筋にアクチンの集合制御因子が存在することを想定し、その精製に取り組み、分子量16K、20Kの3種のアクチン調節タンパク質を完全精製しそれらの特性を解明した。前2つは幼若筋でのみ発現され、他は量的に減少するものの成熟筋でも発現される。16Kタンパク質は、非筋細胞に知られるプロフィリンと同定され、幼若筋内に共存するα、β、γアクチンのうちβ、γアクチンの繊維形成を選択的に抑制すること、19kDaタンパク質は脳に知られるアクチン脱重合因子(ADF)と類縁タンパク質であり、アクチンのタイプを問わず重合抑制するが、ミオシンにより抑制解除されること、20kDaタンパク質はコフィリンに類似し、アクチン繊維に結合し構造変化をもたらすことなどを解明した。筋成長に伴い発現量の増すミオシンとの相互作用が筋原繊維形成を促す重要な要因であることも示した。 2.筋形成における微小管の役割:筋形成過程で筋細胞は伸長し、筋原繊維形成の場を作る。微小管が筋細胞の伸長に主として寄与することを明らかにした。さらに、筋細胞に微小管結合タンパク質(MAPs)の存在を見いだし、その局在を明らかにした。 3.筋形成期の幼若筋の構造タンパク質の特性:筋形成過程でCータンパク質やトロポニンTのタイプの劇的な変化を見いだし、その変化の詳細を解明した。また、幼若骨格筋で胚型ミオシン軽鎖(L23)が発現されることを見いだし、その構造をcDNAレベルで決定、特異的モノクローン抗体を用いて収縮構造への集合状態を明らかにした。
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