研究概要 |
本研究の目的は脊椎動物の各群に属する代表的な種において、血液塩濃度の内分泌的調節を明らかにし、その総合的解析より脊椎動物全体にわたる血液塩濃度の内分泌的調節の進化像を明らかにすることにある。 本年度はその初年に当り次の点について研究を行ない成果を得た。 1.有尾両生類のイモリ及びクロサンショウウオにおいて血液Ca濃度 上昇ホルモンである副甲状腺ホルモンの標的器官を明らかにする目的で、副甲状腺除去、副甲状腺抽出物の投与が体内Ca分布に及ぼす影響をみた。更に【^(45)Ca】をトレーサーとしてCa移動を追跡するとともに、【^(45)Ca】を含む硬骨を培養し副甲状腺ホルモン抽出物の影響をみた。その結果、イモリにおいては哺乳類と同様硬骨が副甲状腺ホルモンの標的器官であることが明らかになった。 2.爬虫類のシマヘビ,ヤマカガシで副腎の血液塩調節を調べるため、 副腎除去と、コーチコイド投与が血液塩濃度に与える影響を調べた。なお、ヘビ類の副腎除去手術は困難で、これまでに報告がなく、その手法は当研究によってはじめて開発された。その結果、前記両種とも副腎除去により血液K濃度が上昇するが、Na,Ca,Mg濃度には変化がない。さらに副腎除去個体にコーチコイドとしてコーチゾル及びコルチコステロンを投与した。その結果、後者に血液K濃度低下作用がみられた。以上の結果より、爬虫類のヘビでは副腎は血液K濃度を下げることにより一定値に保つ機能を有することが明らかである。これは哺乳類の副腎が血液Na濃度調節を主体とする点と著しく異なる。さらに、哺乳類では糖の調節にはたらくコルチコステロンが強いミネラロコーチコイド作用を示すことは、爬虫類の血清塩の内分泌調節は哺乳類のそれと大きく異なることを暗示するものである。
|