研究概要 |
計画に沿ってキンギョ,イモリ,ウシガエル,シマヘビについて、血管よりカヌラにより嫌気的な状態で採血し、そのCa,Na,KイオンおよびPとpHを実験処理前から処理後一定間隔をおいて連続的に測定した。 その結果、処理動物の呼吸条件によって血液の性状が変化し、ホルモン投与などの実験処理に際し、対象動物の呼吸と酸素供給に充分な注意を払う必要があることが明らかになった。特に酸素の供給が低下すると血液のpHが低下し、それに伴って血液のP濃度が上昇することが顕著に認められた。この発見は重要で、過去の報告の結果を慎重に解析する必要があることを示している。 爬虫類、特にヤマカガシを用いて副腎の除去が血液の塩、特にNaとK,およびグルコース,ヘマトクリット値に与える影響を検討した。その結果、副腎の全除去は血液のK濃度の著しい上昇、グルコース濃度の顕著な低下をひき起すが、Na濃度には殆んど影響を与えないことが明らかになった。哺乳類における副腎機能低下は、血液Na濃度の著しい低下をもたらすので、爬虫類、少くともヤマカガシにおける反応は哺乳類とまったく異るものである。爬虫類は系統学的にみた場合完全に陸生に適応した最初の動物群であるので、この相違は、進化の観点よりみた場合重要であると思われる。 トノサマガエルなどの無尾両生類の体内Caの調節は、血液と傍脊椎石灰嚢のCaの移動によることは先に発表した。しかしイモリなどの有尾類のCa調節機構は不明であった。今年度のイモリを用いたin vitroの培養実験において、イモリの血液Caの調節は哺乳類と同様、硬骨と血液のCaの移動によることを示す結果が得られた。両生類でも、有尾類と無尾類でこのように異る機構をもつことの意義を、進化と環境適応の面から考察している。
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