1.長期貯蔵にともなううるち米粒質の変化:古米化の進む過程で米飯のテクスチャーがどのように変化するかを日本稲とインド稲について検討した。テクスチャーの硬さ的要素であるそしゃく性は新米が最も低い値を示すが、籾貯蔵年数が長くなるほど高まる。一方粘着性は新米が最も高く、古米化が進むほど低下する。したがって食味指数は新米が最も高く、貯蔵年数が長いほど低下し、不味となる。2.もち米では貯蔵にともなうそしゃく性の変化は非常に少ない。また粘着性は新米よりは1〜2年貯蔵したものが反って高い値を示す。しかし3年以上の貯蔵では減少する。3.古米化にともない水溶性たんぱく質の含有率は減少する。硬さ、そしゃく性などと水溶性たんぱく質含有率との間には有意な負の相関関係が認められる。4.籾米の乾燥過程において環境温度ならびに相対温度と米の平衡含水率との関係を検討した。平衡含水率の値は相対湿度が低いほど小さいが、相対湿度50%以下では両者の関係は対数函数的、50%以上では指数函数的である。平衡含水率は高温ほど低く、その割合は10゜Cにつき約1%である。5.籾の脱水機構につき籾がら表皮の毛茸の役割に着目して検討した。毛茸は日本稲で長く且つ密生し、クチクラ化し難く、内腔に水分を満たしており、とくに日本稲の登熟中期の活発な表皮蒸散に重要な役割を果すと考えられる。6.籾がらの内部形態の光学および走査電子顕微鏡による検討を行い、毛茸への集水過程を推論した。毛茸を派生する外表皮細胞は縦長の細胞で、外表皮の凹部を成し、凸部を形成し、クチクラ化の顕著な細胞とは質的な差異を示す。毛茸に接する2.3の細胞は染色性低く、多量の水分を集めて、毛茸へ蒸散水分を供給するものと思われた。内表皮に多く見られる小毛茸や気孔は米粒→籾がらへの水分の援受に関係すると考えられる。
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