1.ガンマー線殺菌した粕屋土壌(高全リン酸・高有効態リン酸含量の灰色低地土)および大隅土壌(高全リン酸・低有効態リン酸含量の黒ボク土)に非殺菌土壌を接種源として添加したときに、ダイズの乾物重、子実重およびリン酸集積量が増加した。 2.全リン酸含量が高く、有効態リン酸含量が低い阿蘇黒ボク土でVA菌根菌、Glomus mosseaeとG.etunicatusの胞子を混合接種したとき、殺菌土壌において、リン酸肥料施用の有無にかかわらず、ダイズの乾物重、子実重およびリン酸集積量が著しく増加した。非殺菌土壌ではリン酸肥料を施用したときに接種効果があらわれた。 3.【^(32)P】ラベルリン酸カリを添加した阿蘇土壌からダイズ地上部に集積したリン酸の比放射能はVA菌根植物と非菌根植物の間で差がなかった。合成【^(32)P】ラベル難溶性リン酸塩からの、水耕栽培したダイズによる【^(32)P】の吸収率はVA菌根植物と非菌根植物の間で差がなかった。VA菌根菌を接種した阿蘇土壌では、Ca型とAl型のリン酸含量が低く推移したが、接種による植物リン酸集積量の増加とAl型リン酸含量の変動は必ずしも対応しなかった。従って内生菌根によるダイズのリン酸吸収促進は主として内生菌根が土壌中のリン酸を吸収する場を拡大することになる。 4.十分に施肥した阿蘇土壌と佐土原黒ボク土壌では、竹炭粉末の添加によってVA菌根菌の感染率と感染密度は著しく増加した。しかし、土壌中で移動性が低い養分である亜鉛と銅のVA菌根による吸収促進は認められなかった。 本邦に広く分布するリン酸固定力の強い黒ボク土壌からの作物のリン酸吸収における内生菌根のはたらきが大きいことが示された。すぐれた内生菌根の接種は作物根系のリン酸吸収能力を高め、リン酸施肥量を節減できる可能性がある。
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