本研究はプロラクチンや成長ホルモンなどの遺伝子を導入し、これらホルモンの生殖系機能・免疫系機能における作用を調べるための基礎的研究である。本年度は次下のような成果を得た。 1)遺伝子導入:胞胚の内部細胞塊にプリッキング法で成長ホルモン遺伝子を導入し培養した全受精卵は発生を開始したので、子宮へ移植し産子を得た(出生率12%)。この他、出生に至ったが母親の食害のため回收できなかったものも約同数ある。前核期に雄性前核に遺伝子を注入した受精卵は8%が出生に至った。現在、サザンブロット法、ノーザンブロット法による検索を行っているが、プリッキング法は操作が容易な反面、遺伝子導入の効率が低いようである。 2)卵子の体外成熟:自然排卵卵子を体外受精させると、卵丘細胞の有無にかかわらず、90%以上の精子侵入率が得られる。一方体外成熟卵子では、卵丘細胞付着卵子で14%、卵丘細胞除去卵子では0%と低い。子中血清を含む培養液中で卵胞卵を成熟させると、精子侵入率がそれぞれ70%、20%と著るしく改善された。この結果より、卵子の成熟には卵丘細胞が何らかの役割を果していると思われる。 3)黄体細胞の培養:機能黄体より得た細胞を培養すると最初24時間はプロジェステロンを分泌するが、48時間では20αジヒドロプロジェステロンが多くなる。この培養系に、プロラクチンと共にマクロファージを加えるとプロジェステロンを分泌し続ける。プロラクチンが20αヒドロキンステロイドデヒドロゲナーゼを抑制しプロジェステロン分泌を継続する培養系を作った。 4)プロラクチンレセプター:プロラクチンのレセプターを用いてプロラクチンの生物活性を測ることができる。本研究ではさらに一歩進めてレセプターを部分精製し、その性状を調べた。乳腺のミクロソーム分画より膜に結合したレセプタを可溶化し、DEAEアガロースのカラムを用いて塩化ナトリウムの濃度勾配で3つの画分を分離した。
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