研究概要 |
筋細径求心神経刺激後に出現する呼吸抑制はナロキソン投与により出現しなくなることから、内因性オピオイドの関与が示唆された。この抑制機序につき本年度は主にネコを用い、1)この抑制相のより確実、より強度な発現条件を探る、2)結合腕傍核(NPB)等、オピオイドと密な関連が示唆されている呼吸中枢部位へのオピオイド微量注入効果を調べる、3)enzyme-linked-immunosorbent assay法(ELISA法)によるエンケファリン定量法を確立し、反射性呼吸抑制相出現時の脳脊髄液中のオピオイド量を測定する、の3点につき実験を進め、以下の結果を得た。 1)呼吸抑制相は、刺激を繰り返すと次第に減弱するが、CCKの拮抗薬であるproglumideの低量持続注入により回復し、以後減弱する傾向を示さなくなることが明らかになり、呼吸抑制現象をCCKが修飾していることが示された。しかし、proglumideは量が多いと逆の効果を現わし、効果の分岐する量には大きな個体差がある等、今後さらに検討を要する点である(研究発表1〜3)。 2)NPBの電気刺激(train)を連続20回の呼息相に与えたところ、刺激終了後に、数分以上持続し、ナロキソンの静注により出現しなくなる等、筋細径求心神経刺激による呼吸抑制によく似た呼吸抑制が生じた。吸息相の電気刺激ではこの現象は見られなかった。電気刺激により呼吸抑制を生じた部位へのモルフィンの微量注入により、類似の呼吸抑制を生じた。以上、NPBのこの抑制相への関与が強く示唆された(研究発表45)。 3)ELISA法によるエンケファリン定量法は、ほぼ完成の域に達した。現在は脳脊髄液中のエンケファリン測定のための阻害物の除去等、髄液の前処理について検討を加えている(研究発表6)。1),2)に本補助金により購入したデータレコーダー,ストーレッジオシロスコープ,呼気炭酸ガスモニター,ペン書き電磁オシログラフを使用し、3)に酵素標識免疫測定用吸光度測定装置を使用した。
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