研究概要 |
カルパスタチンはカルパイン(カルシウムイオン依存性システインプロテイナーゼ)の特異的内因性インヒビターであって, カルパインとカルパスタチンは両者で1つの生体内制御系を形成しているものと考えられる. 昭和60年・61年・62年度における本研究にあっては, 特にカルパスタチンの細胞内における機能の解明に注目しつつ, カルパインとカルパスタチンに関する生化学的研究を広範に行い, 次のような成果を得た. (1)カルパイン及びカルパスタチンに対する特異抗体を作製し, これを用いて動物各組織における両因子の分布を詳細に研究した. 特にカルパスタチンについては, ヒト脳下垂体において, その前葉のACTH産生細胞に局在していることが明らかになった. (2)カルパスタチンの2つの分子種(ゲル電気泳動的に68KDaと107KDaのもの)をそれぞれ精製し, そのアミノ酸組成, 等電点, 免疫学的交叉性を調べたところ. 両者は極めて類似の分子であることが知られた. また, カルパイン阻害活性の比較から, カルパスタチン分子には約14KDaの阻害ドメインの繰り返し構造があることを推定した. (3)カルパスタチンに対するCDNAクローニングを行い, そのヌクレオチド配列を決定することによって, カルパスタチン蛋白質の一次構造を明らかにした. これによって, 先に推定された繰り返しドメイン構造の実在が証明された. (4)カルパスタチンの単位ドメインに対するCDNAを大腸菌で発現させることにより得られたペプチドが, カルパイン阻害活性を有することを明からにした. このようなドメインへの分節化が細胞内においても起こるかどうかは, 今回の研究では明らかにすることができなかった.
|