研究概要 |
私共が提唱しているプロテインキナーゼCを介する生理活性物質の受容機構は,代謝内分泌や神経生理学の領域のみでなく,細胞分化や癌研究,免疫学,心脈管学など広い領域にわたって細胞反応の基本構築の解明,病態解析への足がかりとして注目を集めている. 本研究では,昨年度に引き続き,各種の外界情報シグナルに対する細胞反応に際して重要な役割を担うプロテインキナーゼCに焦点をあて検討をおこない, 以下の成果をおさめた. プロテインキナーゼCは極めて構造の酷似する多数の分子種の集合体であるが, そのうち7種についてcDNAを得,その全構造を決定した. 主要な4種については特異的抗体を作成し,各組織より分離分別した分子種との免疫化学的対応に成功した. cDNAを直接COS細胞に発現させて得た酵素との対比と合わせて,各分子種のcDNA構造と酵素蛋白質の対応に成功し,プロテインキナーゼC分子種の構造と機能の関連の解明の化学的基盤を得た. これらの分子種はその活性化様式で,Ca^<2+>やジアシルグリセロールの依存性で微妙な差が見られることに,ある一種は極めて低濃度のアラキドン酸によっても活性化されることから,アラキドン酸力スケードに強い関連を持つと考えられる. また,ECFレセプターやミエリン塩基性蛋白質に対する基質特異性も各分子種で異なっている. ラット各組織での発現様式やリンパ球系培養細胞等を用いた解析から細胞内局所や細胞をホルボールエステルで刺激した際のトランスロケーション等でも各分子種の特異性を見出しつつある. したがって,個々の細胞はそれぞれ固有の分子種のCキナーゼを有し,独自の情報伝達機構を保持している可能性が考えられるに至っている. 次年度は最終年度であり,以上のプロテインキナーゼCの構造機能関連をもとにして,生理的,および病態現象におけるプロテインキナーゼCの機能の解明を行い,本計画研究のとりまとめとしたい.
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