研究概要 |
昭和62年度は,過去2年間の研究を続行すると同時に,過酸素吸入による,ラットの実験的肺胞障害(間質性肺炎発生の機序)を追加した. また薬剤によるヒト間質性肺疾患についても検索した. ヒト間質性肺疾患:特発性間質性肺炎,びまん性汎細気管支炎,閉塞性気管支細気管支炎について検索を続行した. 昨年までの結果をさらに確認出来た. すなわち特発性間質性肺炎では胞隔の線維性肥厚と,硝子膜の器質化にによる肺胞の狭窄があり,細気管支の拡張がある. びまん性汎細気管支炎では,呼吸細気管支領域の肉芽組織による肥厚と,内腔の狭窄がみとめられる. 肺気腫の中で,小葉中心性肺気腫では,呼吸細気管支を含んだ細気管支周囲の線維化と,その部の内腔の狭窄が著しい. また肺胞道も拡張している. 以上の所見は,ポリエチレングリコール固定の肺で,相差電子顕微,実体顕微鏡,およびマイクロソフテックスを使用して明瞭に観察される. 薬剤によるヒトの間質性肺炎について:約50例の血液腫瘍剖検例について,抗癌物質による間質性肺炎に関して検索した. 確かに抗癌物質によって間性性肺炎が発生するが,いわゆる原発性間質性肺炎の像に,抗癌物質の特徴である幼若な細胞,肺の場合は再生にともなうII型肺胞細胞の障害が加わり,肺胞の虚脱と,肺胞内線維化を合併する. 80%濃度の高酸素吸入によるびまん性肺胞障害に関する実験的研究:吸入1時間で,肺毛細血管内皮細胞の高度の空胞化,剥離,基底膜の膨化,消化,2時間で胞隔間質の水腫,I型肺胞細胞の空胞化,変性,剥離がおこり,剥離部に硝子膜様物質が付着してくる. これが間質性肺炎の発生の機序として考えられる. 昭和63年度はヒト間質性肺疾患発生について,更に症例を追加し,実験の結果を加味し,充分に考按を加え結論を出し,発表の予定である.
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