研究概要 |
本年度は, まず遺伝的拘束を持つT細胞クローン(MS202)に人工的および自然の突然変異を起こした株(E3, MS-S1)を得, それらに拘束特異性の変化があることを証明した. この拘束特異性の変化が, T細胞レセプター分子のαおよびβ鎖のいずれかのV領域遺伝子に突然変異が起こったものかどうかを明らかにするために, 元株および変異株よりT細胞レセプター分子を免疫沈降法によって得, それを二次元ゲル電気泳動で解析した. その結果, 変異株においてαβ両鎖ともに分子量が2ないし4kd少なくなっていることが証明された. この糖鎖の変化が拘束特異性にどのような結果を与えるかを現在解析中である. さらに両株よりαβ遺伝子をクローニングし, その一次構造を決定した. 興味あることに, 一つのV_β遺伝子のほかに2つのV_α遺伝子(V_<α4>, V_<α5>)がそれぞれのクローンに表現されていることがわかった. これらの事実は, T細胞においてはレセプター遺伝子の対立遺伝子表現の排徐の原則が必ずしも守られず, したがって2つ以上の拘束特異性が単一のクローンに表現されることを示す. またこれによって, 免疫学の基本をなす, リンパ球系細胞のクローナリティに疑問が提出された.
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