研究概要 |
1.ヒト組織細胞の熱変化と血液型活性 (1)光顕的免疫組織化学並びに免疫電顕法による検討:モノクローナル抗H抗体とコロイド金標識2次抗体を用い、O型ヒト死体顎下腺の漿液腺細胞分泌顆粒辺縁部(中性糖蛋白陽性),膵臓腺房細胞分泌顆粒,胃・小腸粘液顆粒並びに胃壁細胞内分泌細管にH活性の局在を認め、腎では集合管内腔面にやや弱いH活性を検出した。本成績は光顕レベルのものと一致した。 (2)加熱ヒト組織の組織学的変化と型活性:電気炉内でヒト大脳,肺,肝及び腎組織を加熱し、形態変化を電顕的に観察した。外層(組織温約250℃)の炭化直前組織は全体に均質で無構造化していた。より深部(同約120〜200℃)では組織は空胞化し、上皮細胞は基底膜から剥離し、細胞膜は均一化または崩壊、細胞質は粗大顆粒状ないし集塊状で、細胞内小器官の構造も失われていた。光顕切片では酵素抗体法により、炭化直前組織近傍の血管内皮などでもABH活性を検出しており、目下、免疫電顕法で検索中である。 2.高度焼損死体の法医中毒学的研究 覚せいアミン(メタンフェタミン)および向精神薬(クロルプロマジン及びジアゼパム)をウサギの皮下に注射し、中毒症状発現後、肝及び骨格筋を剔出し高温熱に暴露した。これら加熱臓器を表面炭化直前層(約170〜250℃)と深部熱凝固部(約110〜150℃)とにわけて分析した。加熱した臓器ではGC(FID)グラム上に多数のピークが出現し、同定が不可能であった。ところがGC-MS(選択イオンモニターモード)で分析すると、いずれの薬物も同定可能であった。メタンフェタミンは深部熱凝固部で加熱前の約30%、炭化直前層で同約20%前後残存していた。向精神薬も定性的に同定されたが、定量的にはなお問題を残している。
|