超音波の物理的性質を応用して、非破壊的に病的組織も含めた心血管組織のもつ音速、減衰、周波数依存性などの物性を計測し、組織異常の非観血的診断法の基礎を確立する目的で本研究を実施した。本研究目的を達成するにはこれまで実施してきた超音波顕微鏡に関する研究成果を基礎として生体組織物性計測に適した改良を加え、運動状態下でも定量的に計測できる機能を付加する必要があった。そこで本年度では以下の2方面から研究を実施し、次の如き成果を得た。 1)超音波顕微鏡本体の改良研究:a)動きのある生体組織の計測を行なえるようにするために16画面分のメモリを設け表示は0.1〜1秒間隔で連続表示し動画的観察ができる機能を考案し付加した。 b)画像信号の記憶を外部トリが信号で自動的且つ部分的に行なえるようにし動く組織の静止画像表示ができる機能を考案付加した。 c)音響特性の計測値の読みとり及び表示性能を向上させるためにカラー及びモノクロスケールを64階調とし、任意のスケール幅で定量的に表示できる機能を付加した。 d)多重画像表示機能を充実させ、測定精度を向上させるため、任意の部位におけるAモード像を水平方向640の画素数で、多重的にCモード像上にあるいはAモードのみを表示できるようにし、3次元像として表示できる機能を付加した。 2)画像信号高速処理部の開発と付加:a)トランスジューサーからの距離が異なる数枚分のCモード画像信号を高速で記憶し、各画面信号間で演算処理を行って特微抽出ができるようにするための高速処理部の開発研究を行った。市販のHP310を基本とした処理システムを考案して実現した。 b)インターフェースおよび表示方式についてのソフトプログラムを検討して作成し、改良した超音波顕微鏡本体と結合した。 上述の如き本体の改良と高速処理システムの考案付加とにより、生体組織物性計測のための精度のよい機器として完成せしめた。次年度以降本機により計測実験を進める予定である。
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