研究概要 |
ミクロのレベルにおいて、生体組織を構成する個々の組織要素の音響特性を解明し、かつそれら組織要素の分布状況を把握したデータを蓄積することは、心血管組織に発生した組織異常を超音波によって非観血的に、かつ、早朝に診断するための方法および装置開発の研究に不可欠である。そこで60年度は58,59年度に試作した医学用超音波顕微鏡に改良を加えるとともに、高速画像処理システムを付加した。本年度はこの成果をもとに、定量計測と各組織要素の二次元,三次元的な分布の把握、およびデータ集積のために必要な実験の迅速化に主眼を置いた。その結果:(1)58,59年度来試みているカラースケールによる定量表示法は不十分であったが、本年度はカラースケール制御部の改良とGPIBによる画像処理システムとの連結を図り、色,数,レベルを任意に設定できるカラー表示機能を完成したことで、とくに病的組織のごとくミクロレベルの組織構築が複雑なものに対しても、その個々の部分の定量計測と分布の把握が可能となった。(2)生鮮組織や生存組織の計測にはとくに必要な、厚み数百μm以上の試料の計測を可能とするため、透過法の機構に根本的改良を加え、かつ、それまで実質15dB程度であったダイナミックレンジを30dBまで拡長した。このことにより、厚み約500μmの試料を観測したところ三次元分布を観測できる可能性が示された。(3)画像処理システムを付加し、プログラムを検討した結果、それまで実験時間に6時間以上を必要としたが、病的組織でも2時間程度に短縮され、かつ画像単位でデータの記憶が可能となったので、減衰や音速およびそれらの周波数特性、また組織の分布がもれなく再生可能となった。以上の結果、所期の目標である、試料の大きさを選ぶことなく、生存したままで、迅速にデータ取りを行ない、データの集積を図るための基礎技術が大きく向上したと判断される。
|