研究概要 |
高血圧の病因,昇圧機序における膜異常について、Na,Ca代謝を中心に検討し、以下の結果を得た。 1.血球成分,単離細胞標本の調整と電解質含量測定の基礎的検討 白血球はFicoll-Paqueにより、血小板はSepharoseCL22Bカラムによリ分離する方法が、また心筋,腎細胞の単離はBerry&Friendの方法に準じてcollagenase処理を行っており、異相差顕微鏡を用いてその検定を行い、本研究に適した調整法であることを認めた。これら血球内および単離細胞内遊離Ca含量はTsienらのQuin2/AMを用いた方法により測定し、定量的に測定し得ることを確認した。 2.高血圧における細胞膜異常に関する検討 高血圧自然発症ラット(SHR)の血球成分、とくに血小板の遊離Ca濃度は対照のWistar Kyoto Rat(WKY)のそれに比し、有意に上昇しており、Ca括抗薬のnicardipine投与により、降圧とともに低下することを認めた。一方DOCA・食塩高血圧ラットでは血小板内Ca増加がみられず、SHRにおけるCa増加は血圧上昇による二次的変化でないものと考えられた。本態性高血圧患者の赤血球内Na濃度は正常血圧対照群に比し有意に増加、血小板内Ca濃度も上昇傾向を認めた。またそれらの輸送機序の一つであるNa-Li counter transportも同様に上昇していることを認めた。膜異常の一指標として、赤血球fragilityを検討し、本症患者では正常血圧者に比し低下しており、細胞内遊離Caの増加が示唆された。 3.細胞膜分画における電解質結合能および酵素活性に関する検討 心,腎について各細胞膜分画を超遠心スイングローターおよび庶糖密度勾配作製機を用いて分離し、純度の高い膜分画が得られることを確認し、SHRについてそのCa結合能,Na-K ATPase,Na-Ca ATPase活性の基礎的検討を行っている。
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