研究概要 |
(1)標識した抗癌剤を用いてL1210およびP388マウス白血病細胞の膜輸送を検討した。河井、井戸らは、ビンクリスチン、アドリアマイシン耐性細胞では標識した抗癌剤のeffluxが増大していることを証明し、さらに、この耐性化機序に対しては、【Ca^#】拮抗剤が有効であることを確認し、発表した。 (2)ara-C,5FUの細胞内活性化産物であるara-CTP,F-UTPを他の細胞内核酸プールと共に、高速液体クロマトグラフィ法により同時分析が、新しく購入した多波長検出器を用いることによって、可能となった。この方法を用いて佐藤,櫻井らは、MTX-ara C,MTX+5FU併用療法後の細胞内核酸代謝に及ぼす影響を検討したところL/2/0細胞ではMTXをいずれも、3-6時間先行投与することにより、これら細胞内活性化産物であるara-CTP,F-UTPの産生増加を認めた。 (3)MTX投与後のara-CTP増加のメカニズムについては、MTX投与によるdTTPの減少の結果起こったものではなくむしろ、MTX投与によるプリンde novo合成経路の阻害による細胞内ATP,GTPプールの減少がCTPsynthetase,CDP reductaseを抑制したためと考えられた。 (4)MTX+5FU併用療法においては、MTX投与によるプリンde novo合成経路の阻害による細胞内PRPPプールの増加が、MTX投与後のF-UTP増加のメカニズムと考えられるが、5FU単独投与と較べてMTXを併用しても細胞内dTTP濃度は、特に有意差は認めなかった。 (5)これらの結果からara-C,5FUにMTXを併用することによりみられたこれらの細胞内代謝産物の産生増加がMTX-araC,MTX+5FU併用療法における作用増強のメカニズムであることを見いだした。
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