研究概要 |
けいれん発現と抗てんかん薬作用についてイノシチド(PI)レスポンスおよびその周辺の生化学反応の関連性を追究しつつある。我々がラット大脳の膜画分に見出したフェニトイン(代表的抗てんかん薬の一つ)の特異的結合部位に対する脂質の影響を検討し、脳の各種脂質の中でポリホスホイノシチドのみが上記結合部位と親和性を示すことを認めた。 そこでPIレスポンスとその周辺の反応系について、けいれん発現と抑制との関係を追究した。まず大脳皮質のPIレスポンスはけいれん促進性とされるムスカリン性アセチルコリン(mAch)レセプターのアゴニストであるカルバコール(CCh),高濃度の【K^+】イオン,グルタミン酸により促進された。しかしけいれん抑制性とされるノルエピネフリン(NE)によってもレスポンスは促進され、一方けいれん剤ペンチレンテトラゾール(PTZ)や刺激性アミノ酸のN-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)では影響が認められなかった。これはPIレスポンスがけいれん発現と直接に関係をもつものでないことを示唆する。しかしPTZ,NMDAはけいれん促進性のCChによるPIレスポンスの促進性を阻害し、けいれん抑制性のNEによるレスポンス促進には影響を示さなかった。一方PTZはmAchレセプター結合活性に対し阻害作用を示すが、NMDAではその作用が認められなかった。また最近イオンチャネルとの関連性が報告されているサイクリックGMPをNMDAが上昇させることを認めた。 これらの所見からmAchレセプター,グルタミン酸レセプター,PIレスポンスなどが関連し合い、GTP結合蛋白,イオンチャネルを介して神経細胞内外のイオン動態を変化させる可能性があり、これがけいれん発現と関連することも考察される。またこれら関連物質の放射活性化物を脳内特定部位にMediobio oprical brain tracerを用いて注入し反応を検討する予定である。
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