研究概要 |
我々はオピオイドペプチドの前駆体構造から新しい内因性オピオイドペプチド、ロイモルフィン(LM)の存在を予測し、それが脳内に実在することを明らかにした。そこでLMの脳内分布を検討し、視床下部,辺縁系,大脳基底核などに多いこと、視床下部のLMは性週期とともに変動することを見出した。次にLMを始め、他のオピオイドペプチドのプロラクチン分泌への影響を観察し、LMに極めて強力なプロラクチン分泌作用があること、その作用の一部は下垂体への直接作用であることを明らかにした。またオピオイドペプチドのプロラクチン分泌促進作用の機序について、脳内アミンを減少させる薬剤を用いた検討を行うとともに、視床下部のin vitroでの潅流実験を行い、ドーパミンの分泌抑制が、プロラクチン分泌増加の一つの要因であることを明らかにした。またオピオイドペプチドは成長ホルモンの分泌を促進するが、その機序を明らかにするため、成長ホルモン放出促進因子(GRF)との関係を検討した。その結果オピオイドペプチドはGRFの放出を介して成長ホルモン分泌を促進することが、抗GRF抗体の投与などの実験で確認された。次にオピオイドペプチドは全てゴナドトロピン特にLHの分泌を抑制することを明らかにしているが、拘束ストレスによるLH分泌の抑制にオピオイドペプチドが関与するか否かを調べた。その結果関係は見られず、むしろセロトニン系の関与を示唆する成績を得た。次にオピオイドペプチド、とくにLMの飲水への影響について研究し、全ての要因による飲水を抑制すること、LMの作用が最も強いことを見出した。かつ抗LM血清の脳室内投与は飲水を促進する事実を見出し、LMの飲水抑制作用には生理的意義があるものと考えられた。またLMの脳室内投与は抗利尿ホルモン分泌を抑制する事実を観察した。
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