研究概要 |
我々の見出した新しいオピオイドペプチド,ロイモルフィンの脳内分布は既に明らかにしたが、その生理的変動を知るためラット性週期中の変化を則定した。その結果視床下部及び下垂体前葉のロイモルフィンは発情前期に最高値になる変動を示したが、下推体後葉,脳の他の部位のロイモルフィンは有意の変動を示さなかった。ロイモルフィンがメスラットの性行動を促進する事実と合わせて、ロイモルフィンの性機能調節における役割を示唆するものである。次にロイモルフィンの血圧,体液調節への影響をラットを用いて検討した。ロイモルフィンはアンジオテンシン【II】(A【II】)によって誘発される血圧上昇及び飲水を用量反応的に抑制した。この抑制はオピエート拮抗剤ナロキソンにより拮抗された。ロイモルフィンはまた飲水制限によって起こる飲水も抑制した。しかしナロキソン単独でも軽度の飲水の抑制が見られオピオイドの作用は複雑であることが明らかとなった。ロイモルフィンはまたA【II】や飲水制限によって起こるバソプレッシンの分泌を用量反応的に抑制し、この作用もナロキソンにより拮抗された。ナロキソン単独もバソプレッシン分泌を増加させたので内因性オピオイドペプチドはバソプレッシン分泌を抑制的に調節している可能性が大きい。興味あることは心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)がロイモルフィンと同様にA【II】による昇圧反応,飲水,バソプレッシン分泌を抑制することである。ANPとロイモルフィンの間には一定の関係があるものと考えられるが、詳細は不明である。ロイモルフィンは下垂体プロラクチン分泌を用量反応的に促進した。この作用はラット下垂体灌流系においても証明されることから、従来FK33-824などのオピオイドにみられた視床下部ドーパミン機構を介する間接的なものと異なり、直接下垂体に対する作用と考えられた。ロイモルフィンの脳室内投与は無麻酔ラットの血糖,血中エビネフリンを増加させた。
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