10〜50kgのオーミニブタを用い40回の全肝移植実験を行った。我々が既に開発した大動脈遮断法とTemporary Cuff Methodを用いた全肝移植術式と従来の体外静脈バイパス法を用いた術式の比較を行ったところ、大動脈遮断とTemporary Cuff Methalを用いた術式では、従来のバイパス法と縫合による血管吻合による肝移植術式より良好な生存率が得られ、バイパス法とTemporary Cuff Methodを用いた術式とでは、ほぼ同程度の生存率が得られた。また、胆道再建については、総 管端々吻合のみの場合と、総胆管端々吻合にTチューブを留置した場合の両者の比較を行ったが、Tチューブを留置することにより、吻合部の狭窄、縫合不全は減少したが、bile sludgeの発生や胆道感染に関しては差がみられなかった。長期生存例の死因として、最も問題となったのは胆道合併症であった。最長生存例は、現在10ヵ月間生存中で、肝移植時の体重30kgであったものが現在は80kg前後と良好な発育を示している。 移植手術中の生理学的モニターについては、未だ結論を出すのに充分なデータが得られていない。しかし、肝血流量に関しては、ドナー手術において、手術開始時に比し肝摘出前に門脈血流量がかなり減少する傾向がみられる。また、レシピエント手術においては、生理学的パラメータが激変し、また、各回の実験間のばらつきが大きく、レシピエント手術における全身管理の難しさを示唆している。移植肝の血流再開後に心拍出量がかなり低下するが、これと平行して門脈、肝動脈血流量もかなり低下する傾向がみられた。 保存中の移植肝の潅流液の解析については、高速液体クロマトグラフィーの導入が予定より大きく遅れたこと等の原因により、まだ、報告に値する十分な資料は得られていない。
|