研究分担者 |
後藤 振一郎 東京大学, 医学部(病), 医員
水田 哲明 東京大学, 医学部(病), 医員 (50166013)
長尾 桓 東京大学, 医学部(病), 医員 (90143487)
河野 信博 東京大学, 医学部(病), 講師 (40010160)
森岡 恭彦 東京大学, 医学部(病), 教授 (10048952)
|
研究概要 |
本年度の研究課題のうち1)保存肝にviabilityの指票の検討と2)移植肝の拒否反応の判定ならびに治療法に関しての検討は移植手技の完成後に始めて可能であると考えられるが,昭和61年5月までの42回のミニブタ肝移植実験での術死(24時間以内の死亡)が20匹と半数近くに達したことを考慮して移植手技の改良および移植時のRecipientの生理学的解析に主眼をおいた. その1つは同所性肝移植時には避けられない門脈幹および下大静脈の遮断時のRecipientの血行動態に関して,腹部大動脈遮断の効果を中心に検討することであり他の1つは従来の静脈バイパス法にカフ吻合法(この組合せは筆者の知る限り今まで行なわれたことがない)を併施することによる無肝期の短縮効果の有無を知ることであった. 前者については,門脈と,または,下大静脈をそれぞれ5分間遮断する場合,腹部大動脈の遮断の併施によって非遮断部での動脈圧の低下および,心拍出量の減少が有意に防止されることが判った. カフ吻合法の採用によって安定した血管吻合に基づいて,大動脈遮断のRecipientの術後経過に対する影響を動脈遮断をしない門脈.下大静脈バイパス法と比較すると,手術死亡率は前者で約30%,後者でも30%と大差はないが,術中の酸血症の程度や第一病日でのLDH,GOT等の肝機能検査の異常および第2ー4病日でのフイブリノーゲンの上昇に表される血液凝固系への影響は,大動脈遮断ではみられた. これらのことから,術後早期における静脈バイパスの効果は明らかであるが,長期生存例では生存日数において両者に差はないと思われた. なお,カフを留置したまの長期生存例(およそ30日以上)では合成樹脂で作られたカフ部分の血管に肉芽様の肥厚が出現し吻合口の狭窄が認められた. この問題に対して,私共は,血流再開後にこのカフを除去する方法を考案し,新しいシリーズには採用している.
|