研究概要 |
特発性門脈圧亢進症(1PH)の成因については、未だ一定の見解がえられていないが、我々は単に肝内門脈枝の閉塞以外に免疫学的機序の関与を推測してきた。以下、この点に関する昭和60年度の研究成果について述べる。 【◯!1】免疫学的機序による1PH実験モデルが作成しえた。即ち、1PH患者の脾および同種ウサギ脾をFreund's complete adjuvantと共に遷延感作したウサギで、約3ヵ月以上経過したものでは、175mm【H_2】O以上の門脈圧亢進が発現した。1PH脾を注射したウサギでは24羽中19羽(79.2%)、同種脾を注射したウサギでは21羽中10羽(46.7%)に圧亢進がみられ、同時に脾腫が全例にみられ、前者では最大8.0g、後者では13gであった。さらに、末梢血液所見でも両者において汎血球減少がみられ、組織像でも脾は脾炎像,髓索の線維化,洞増殖が、肝は感作の進行と共に線維化と細胞浸潤がみられ、特に、小葉間胆管周囲に強く、アレルギー性胆管炎の像がみられた。また、一部に甲状腺炎像も観察された。これらの成績は人の1PHと類似する点が多く、1PHの成因に自己免疫機序の関与が強く示唆される。現在肝硬変患者の脾を用いた時の異同について同様に検索している。今までの成績では、あまり差がないように思われるが現在詳細に検討中である。 【◯!2】1PH患者の脾腫は大きいが、脾内のTリンパ球のSubpopulationをOKTシリーズでみると、OKT3陽性細胞が多く、OKT4に比べOKT8陽性細胞が多い傾向がみられた。また、Leu2a陽性細胞の脾内百分率比も高い傾向がみられた。また、末梢血中ではsuppressor/cytotoxic Tリンパ球百分率がやや低下している傾向にあった。これらの点は、かかるsuppressor Tリンパ球が脾と関連して、1PHの成因に関与するものと推測された。 【◯!3】1PH脾の肝に及ぼす影響として、まず、正常ラット脾が初代肝培養細胞に及ぼす影響をみたが、脾には肝再生を抑制する因子の存在することが確められた。これらの因子についても、現在なお追求中である。
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