研究概要 |
従来より、私たちは特発性門脈圧亢進症(IPH)の成因には免疫機序が関与するものと推定し、前年度までにIPH脾の家兎感作実験にて、極めて臨床列と類似した病態を作成し得ているが、61年度の研究成果について述べる。1.抗原として用いたIPH脾に対して、今回は肝硬変症脾の20%抽出液をFreund Complete Ajuvantとともに雌家兎に2ml/kg,2週間に1回の割で遷延感作実験を行い、肝,脾,甲状腺の組織像および門脈圧,脾腫の程度,末梢血液所見,自己抗体の検索をした。成績については現在整理中である。併せて脾摘後の変化についても検討中である。2.モノクローナル抗体を用いてIPH脾の免疫組織化学的検索を行い、【B_1】陽性細胞を主とし、発達した胚中心を有する大型のリンパ濾胞の存在、胚中心ではLeu3a,Leu7陽性細胞の増加など、旺盛な免疫反応を示唆する所見がみられた。現在、巨脾性肝硬変症,日本住血吸虫症,PBCの脾についても検索し比較検討中である。また、Flowcytometryによる脾内のリンパ球サブセットの検索では、IPH脾は正常脾に比べてLeu2a陽性細胞が多く、Leu3a/Leu2a比が低値を示し、末梢血リンパ球サブセットでは正常に比し、Leu2a陽性細胞の低値,Leu3a/Leu2a比の高値が認められた。3.脾摘後の肝に及ぼす脾内因子の検討は、ラット初代培養肝細胞のDNA合成における【^3H-】thymidineDNA分画への取り込み成績でみると、DNA合成は培養開始48時間後に最高に達するが、脾抽出液添加群ではDNA合成が有意に低下した。また、脾抽出液をSephadex G-75カラムでゲル濾過し分画すると、その活性因子は分子量50,000〜60,000daltonの蛋白であると推定され、脾蔵には肝再生を抑制する蛋白様物質が存在することが示唆された。また、現在では肝細胞の核DNA量の測定などの面からも検討している。以上、61年度の研究実績について報告した。
|