研究概要 |
1ラット虚血脳ホモジネートにおけるNADPH依存性脂質過酸化反応の進展をスピントラッピング法によるESR測定を用いて検討したが, 虚血脳においてすでにラジカルの発生を認め, 血流再開後にさらにラジカル強度は増大した. 三主幹動脈閉塞ラット虚血脳モデルにおいて超微弱発光を測定したところ, やはり, 虚血中より発光増加を認め, 血流再開後著明に増大した. 以上より, 虚血中よりすでにフリーラジカルが発生し, さらに, 血流再開に伴い急激に増加することが示唆された. また, 以上の実験において, マニトール, グルユユルチユイド及びビタミンEを前投与したところ, シグナル強度が著明に減弱することが明らかとなった. すなわち, 脂質過酸化反応が有意に抑制されるものと考えられた. 2.虚血脳における膜脂質代謝について検討した. 虚血の開始により, リン脂質, 特にイノシートルリン脂質が急激に減少した. この減少は, 遊離脂肪酸の中でもとりわけステリアン酸とアラキドン酸の増加を引き起こし, 虚血後の細胞障害の重要なFactorとみなされている. またこの減少は血流再開により, エネルギー代謝の回復を待たずに, 速やかに回復することが明らかとなった. この実験系においてフェニトインを前投与したところ, エネルギー代謝の温存と遊離脂肪酸増加の抑制が, 虚血中に認められた. さらに, 血流再開後のエネルギー代謝の回復も良好であった. その機序としては, フェニトインは細胞膜安定化作用を有しており, 虚血負荷による細胞内Ca^<2+>の増加抑制の可能性が示唆された. 3以上より, マニトール, グルユユルチユイド, ビタミンE及びフェニトインの脳保護効果が実験的に明らかにされ, 現在, 臨床的にその効果を検討している.
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