研究概要 |
気管内麻酔中、無呼吸時に気道を介して得られる心原性拍動波を解析することにより心機能を評価することが本研究の目的で、心エコー図と対比することにより各種吸入麻酔薬の影響を検討している。 1.気管内チューブに接続した圧トランスデューサーより得られる圧変化から心収縮時相(STI)に相当する部分を測定し、同時に測定した心エコー図よりの心収縮時相と高度の相関が得られることを確認した。STIのパラメーターにつき各種麻酔薬の影響はハロセンの場合、濃度上昇に従い前駆出時間(PEP)に対応する部分が延長した。左室駆出時間(LVET)には明らかな変動が認められなかった。エンフルレンの場合、PEPはハロセンと同様の傾向を示したが、LVETは浅麻酔でも減少し、PEP/LVETは増加傾向を示してより強い心機能の抑制が示唆された。セボフルレンに関しては、浅・深麻酔とも上記パラメーターに有意の変動がみられず、心機能抑制の程度は前二者に比べ軽いものと考えられた。したがって、気管内心拍動波より得られる心収縮時相に関する情報から吸入麻酔中の心機能を評価できることが判った。2.気管内心拍動波に伴う気体の流量変化を呼吸流量計により測定し、心収縮に一致して気道内にみられる陰性波の一次微分量大値と心エコー図より得られる駆出率,収縮分画,平均円周短縮速度と対比した結果、相互の間に有意の相関が認められた。また、エンフルレン麻酔によりそれぞれ有意の減少傾向がみられ、心機能抑制を示す指標となり得ることが示された。3.気管内心拍動波の心拡張期時相に関するパラメーターを心エコー図よりのそれと対比した成績では、相互の間に明らかな相関が得られず、また、麻酔薬の影響についても有意の変動が認められず、今後の検索を必要とする。
|