研究概要 |
1.細菌線毛の種類と尿路病原性に関する研究:尿路分離菌における細菌線毛の保有率と線毛の種類について検討した. 尿路感染由来大腸菌では赤血球凝集性により8種類のパターンがあり, 少なくとも8種類の線毛発現形態のあることが示唆された. その他の尿路感染由来の腸内細菌属について, 赤血球凝集反応により, 線毛保有率を検討した. その結果, セラチア, クレブジエラ, 大腸菌等では線毛保有率が高く, シトロバクター, プロテウス, プロビデンシア, 緑膿菌等では線毛保有率が低かった. 2.ラテックス凝集反応によるP線毛保有状況:尿路由来大腸菌には, P線毛とタイプ1線毛の存在が知られており, その意義が論じられている. P特異的凝集反応にて, 急性単純性膀胱炎患者より得られた大腸菌株についてP線毛の保有状況を検討した. その結果, P線毛保有率は20%,タイプ1線毛保有率は50%で, 両者保有株が6%であった. P線毛保有株は全てマンノース抵抗性凝集反応を示したが, マンノース抵抗性凝集反応を示す株の52%はP線毛ではなく, nonーP, nonータイプ1線毛の存在が示唆された. 3.線毛発現に及ぼす尿成分の影響:タイプ1,P線毛の発現に対する尿及びその構成々分の影響を調べた. その結果,タイプ1,P線毛ともに尿および尿素の影響を受けたが, NaClの影響は少なかった. 4.線毛を中心とする菌側病原因子に対する生体側尿路感染防御因子の作用に関する研究:尿路感染症の主な防御因子として重要な白血球機能の腎盂および尿中での影響を調べる目的で, NaClや尿素のスーパーオキサイド産生能に対する影響を調べた. その結果, 高浸透圧下ではスーパーオキサイド産生能の低下があり, NaClと尿素では2つの違ったメカニズムに依る事が明らかとなった.
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