研究概要 |
眼科領域における新しい免疫療法の開発を目的として、昭和60年度に下記の如くの研究成果を得た。1)実験的ブドウ膜炎におけるシクロスポリンA,D,G及びステロイド,サイクロフォスファミドの各種免疫抑制剤の効果をルイス系ラットで比較した。ブドウ膜炎に対する発症抑制効果はシクロスポリンA(CsA)が最も強く、5mg/kg/日でほぼ完全に抑制し、CsGは20mg/kg/日でほぼ完全に抑制した。CsDにはブドウ膜炎発症抑制効果は極めて低かった。一方、腎障害を組織学的に検討したところ、CsA(10mg/kg/日)ですでに近位尿細管の浮腫が認められたが、CsD,CsGにはほとんど腎毒性が認められなかった。感作に使用した抗原に対する細胞性免疫反応のみを選択的に抑制した。サイクロフォスファミド及びデキサメサゾンは、投与期間中はよくブドウ膜炎を抑制したが、投与中止後しばらくして発病し、全免疫反応を非選択的に抑制した。以上の動物実験の結果より、CsGはCsAと同様にブドウ膜炎治療に有効と考えられた。2)網膜芽細胞腫に対する免疫療法:ヒト網膜芽細胞腫継代細胞(Y-79)に対するモノクローナル抗体を作製し、その特異性を検討した。Y-79細胞に対する反応は良好に認められたが、網膜芽細胞腫の患者より得た新鮮腫瘍細胞に対する反応が極めて低く、又、神経芽細胞に対する交又反応が弱く認められた。3)角膜移植後拒絶反応に対する免疫療法:CsA,CsG,CsDを、ピーナツ油に溶解し、点眼剤とし家兎に点眼しその刺激反応を調べたが、角膜ビラン、結膜刺激作用は軽微であった。点眼後の血中CsA濃度を測定したところ点眼後のCsA血中濃度の上昇が認められた。今後の実験で点眼による全身吸収の作用を念頭におく必要があると考えられた。
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