研究概要 |
調節が眼内循環に及ぼす影響について, 猿眼で樹脂を注入して検索する方法で主として毛様体部の血管構築及び房水循環の微小循環を調べると共に, 人眼での調節時の変化についても検討した. 1.猿の頚動脈から樹脂を注入した所, 毛様体は長後毛様動脈と前毛様動脈の二系の血管系で支配されていて, 夫々の分布や支配領域, 吻合の頻度, 生理的役割について或程度解明出来た. この血液循環系の調節による影響は今回の薬物による刺激では不明であり, 今後は新しい調節刺激法を開発し検討する必要がある. 2.房水循環系は主排出路と副排出路がある. 従来, 房水排出路の樹脂鋳型標本は頚動脈から樹脂を注入した逆行性のものであった. しかし, 本研究では猿眼の前房内樹脂を注入し順行性に樹脂を入れる方法を完成確立した. 3.以上の方法を用いて, 主排出路である角強膜線維柱帯と内皮網の移行部の詳細を明らかにした. 特に, 副排出路であるuveosclcral outflow routesに関しては興味ある知見が得られた. すなわち, 前房隅角から侵入した樹脂は毛様体筋束間に入り筋層間を後方へ移動し, これは次々と外側の筋層間に移行していた. この筋層の筋束間には楕円形のporeが存在しこれを通過していることもわかった. そして, この樹脂は毛様体下腔から脈絡膜下腔へ及んだ. 4.調節と非調節状態を想定して, 猿眼にピロカルピンあるいはアトロピンを点眼して上述の筋束間のporeを観察した所, 両者でporeは狭細化していた. この意義に関しては今後の検討課題である. 5.人間で前面開放型オプトメータを用いて調節微動と心博の周期を調べた所, 近視では正視のそれにくらべ小さかった.
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