研究概要 |
本年度は, 最終年度であるので, 前年度までに得られた研究成果をとりまとめ, これらの結果の最終的な検討と評価を行った. その結果, エナメル質形成に伴うエナメル芽細胞のエナメル質の微細構造の発生に関する三次元的関与に関して, 以下の結論を得た. 1)透過ならびに走査電子顕微鏡による観察結果から, イヌ, ネコのトームスの突起は「斜めに切り取られた円柱頂部の角」と表現し得る独特の形態をしている. これはS面, N面と呼ぶ二つの半円形より構成されている. 2)エナメル質形成に伴う結晶新生はS面とトームスの突起間の細胞自由表面上にのみ, これらの面に垂直に生じる. N面は単純な滑り面である. 3)このことにより, 小柱の横断形態は, S面の輪郭によって決定され, 小柱内の結晶配列は, S面の表面形態によって決定される. 4)エナメル質形成終期には, トームスの突起は「切り株状」となり, S面と細胞自由表面は不連続になり, 小柱は小柱鞘によって完全に囲まれるようになり, 小柱は小柱間質と連続性を失う. 5)小柱を構成する結晶は, トームスの突起のS面上で新生配列する結晶から構成され, 小柱間質は, エナメル芽細胞自由表面上に配列する結晶より構成される. さらに, これらのエナメル質形成に関する理論を, 客観的に証明するために, コンピュータシミュレーションを行ない, 上記の理論の検証を行なった. その結果, 上記の理論を数式化して描かせたエナメル質内の二次元的, 三次元的配列は, 実際のエナメル質内での結晶配列を, 与えられた条件の中で正確に再現, 本研究で得られたエナメル質形成の理論の妥当性が証明された. 上記の研究成果の一部は, 共著の単行書として公表した.
|