研究概要 |
本年度我々は、活性型ビタミンD〔1α,25【(OH)_2】【D_3】〕によって肺胞マクロファージ(Mφ)が融合する過程において、【◯!1】ポリアミン代謝がどのように関連するか、【◯!2】Mφが融合する前後において骨吸収能がどのように変化するかの2点について検討を加え、以下の結果を得た。 〔結果〕【◯!1】マウス肺胞Mφは【10^(-8)】Mの活性型ビタミンDを添加する事により60〜80%の割合で融合がおこるが、活性型ビタミンDと共にスペルミジン合成の阻害剤であるMGBGを添加すると、融合がほぼ完全に阻止された。MGBGによるこの融合の阻害は、スペルミジンの添加により完全に回復した。また、活性型ビタミンDにより亢進する蛋白合成もMGBG添加により著明に低下し、スペルミジン添加により回復した。続いて、〔【^3H】〕-オルニチンを用いてMφのポリアミン代謝を検討した所、活性型ビタミンDによってスペルミジンの合成が高まり、MGBGを添加する事によりスペルミジンとスペルミンの合成が著明に低下した。【◯!2】細胞の骨吸収活性は、種々の処置を行った肺胞Mφに【^(45)Ca】でラベルした骨粉を添加し、骨粉から遊離してくる【^(45)Ca】を測定することにより調べた。肺胞Mに活性型ビタミンD、LPSを単独あるいは同時に添加すると、活性型ビタミンDにより多核巨細胞が形成されるが、LPS単独あるいはLPSと活性型ビタミンDの併用添加の系においては、Mφの活性化は起こるが融合は促進されない。これらの細胞の骨吸収活性を調べた所、融合した細胞において骨吸収活性が著しく増加する事、更に活性化したMφについても骨吸収活性の増大が若干観察された。 〔結論〕【◯!1】活性型ビタミンDによるMφの融合過程においては、ポリアミン、特にスペルミジンの合成を介したある種の蛋白合成が関与する。【◯!2】活性型ビタミンDによって融合したMφは高い骨吸収活性を持つ。
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