臼歯修復用コンポジットレジンが開発され、臨床に応用されつつある今日にあっても、これらレジンの耐久性に関しての確たる情報はなく真の耐久性に関しては臨床試験に依存しているのが現況である。そこで、本研究は臼歯修復用レジンの耐久性をin vitroで合理的にしかも短期的に予測する方法の開発と確立を目指し、あわせて耐久性の優れた修復材料の開発の情報を提供することを目的として計画、実施され、現在までに以下の成績を得ている。 1)レジンに対するエージング法として加温する場合、60℃が限界であり、60℃を超えるとレジン表面に異常な変質が認められた。 2)コンポジットレジンが部分的に加水分解される状態を短時間で再現するために、NaOH溶液中浸漬が有効であり臨床で認められる状態に近い表面状態が観察された。 3)当教室考案の咬耗試験機を用い、23℃環境下にて1N-NaOH溶液に浸漬しながら20Kg/【cm^2】の負荷にて50万回咬合咀嚼させた場合の磨耗量は、実際の口腔における約2年分の咬耗量に相当していた。 4)一般にヒトは年間約200万回咀嚼することを基礎として、3年分(600万回)の繰り返し圧縮を負荷した後にレジン試片の圧縮破壊強さを測定したところ、繰り返し圧縮荷重の上限値が1000Kg/【cm^2】以下では繰り返し圧縮荷重を負荷していないものとの間に有意差はなかった。また、繰り返し圧縮荷重の上限値を1500Kg/【cm^2】とした場合、繰り返し圧縮回数400万回〜600万回の間で破壊してしまうものが多く、600万回まで耐えた試片でも約2割圧縮破壊強さが低下した。上限値2000Kg/【cm^2】では繰り返し圧縮回数約5万回(平均)で全試片が破壊してしまった。 5)試片に気泡キズ等が存在する場合、特に繰り返し圧縮に対する耐久性が著しく低下することが判明し、細田考案の無気泡練和法が耐久性の向上に大きく寄与することが示唆された。
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