研究概要 |
本研究は、一般臨床に徐々に普及しつつある臼歯修復用コンポジットレジンの口内耐久性をin vitroで合理的宜つ短期的に予測する方法を開発し、併せて耐久性の優れた修復材料を開発するための情報を得るために企画、実施されたもので、次のような知見が得られた。 1.レジン試片に新機軸の試験機を用い繰り返し圧縮を負荷すると、その圧縮破壊強さは繰り返し圧縮しない場合に比べて低く、また繰り返し圧縮回数を増加させるに従ってレジンの圧縮破壊強さは低下する傾向にあった。 2,0.1NNaOH液中に保管されたレジンの圧縮強さは、蒸留水中に保管された場合に比べて著しく低下していた。またNaOH液中保管試片は、蒸留水中保管試片に比べて有意に低い繰り返し圧縮回数で破壊した。 3,当教室考案の咬耗試験機を用いて、NaOH液に浸漬しながら20kg/【cm^2】の負荷にて50万回の咬合咀嚼させた場合のレジンの磨耗量を測定すると、実際の口腔における約2年分の咬耗量に相当することが判明した。 4.レジン試片内に気泡が多量に含有されると、繰り返し圧縮破壊強さ等の物性が低下するだけでなく、咬耗量も著しく減少し、細田考案の無気泡練和法が耐久性の向上に大きく寄与することが示唆された。 以上のことから、レジンが口腔内で長期間に受けるであろう加水分解の様相をNaOH液中に浸漬することで短期間で再現でき、さらに咀嚼によって長期間受けるであろう繰り返し圧縮に対する耐久性や咬耗量を繰り返し圧縮試験機及び当教室考案の咬耗試験機により合理的宜つ短期間で正確に把握でき、臼歯用レジンの耐久性をin vitroで容易に予測し得ることが判明した。また臼歯用レジンの耐久性を向上させるためには、加水分解し難い材料で、しかも強靭なフィラーが高密度に充填され、フィラーとマトリックス間の結合力も優れたものであることが結論された。
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