研究概要 |
1. 本研究の目的:成長期にある小児を対象とする歯科臨床においては、とくに歯・顎・顔面領域の成長発育を支配する各要因に関しての詳細な知識を必要とする。本研究では、ラット及びマウスなどの純系実験動物を用いた交配実験を行い、歯・顎・顔面領域の成長を支配する遺伝と環境の役割を明らかにしようとするものである。 2. 研究成果 (1) 研究機器の購入:ラット受精卵の移植を行うに必要な実体顕微鏡システム及び炭酸ガス培養装置、歯及び顎の成長量測定のための画像解析装置,高速演算処理システム,図形描記装置、などの購入を行った。また歯牙切片作成にあたっては振動ブレが少なく、正確に切片が作成可能な硬組織用カッティングマシンを使用している。 (2) 母体効果の要因解析:成長を支配する要因のうちとくに成長初期において大きく影響する母体効果を解明するため、マウスの受精卵を他系統の母体へ移入し、仔マウスを成育させ、その成長経過を追跡するべく、現在受精卵の取り出し、培養、偽妊娠母体への移植技術を修得し、準備を整えている段階である。 (3) 歯の成長量測定:2系統の近交系マウス(AKR/JSea,BABC/cSea)にEDTA鉛を経時的に注射した。60日間にわたって飼育した後に、歯の薄切片を作成した。各切片の像を顕微鏡TVカメラから画像解析装置へ入力し、歯の成長量を体積量として評価する方法に成功した。この方法は歯の成長量を客観的に定量する方法としては画期的であり、遺伝学的解析に有用なものである。 (4) 歯の大きさに関する遺伝学的解析:総当り交雑法による遺伝学的分析法を応用するため、5系統のラットを用いて、試行実験を行い、今後は最終的に10系統のマウスもしくはラットによる交配実験を予定している。
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