研究概要 |
1.本研究の目的 成長期にある小児を対象とする歯科臨床においては、とくに歯・顎・顔面領域の成長発育を支配する各要因に関しての詳細な知識を必要とする。本研究では、ラット及びマウスなどの純系実験動物を用いた交配実験を行い、歯・顎・顔面領域の成長を支配する遺伝と環境の役割を明らかにしようとするものである。 2.研究成果 (1)母体効果の要因分析:成長の初期に大きく関与する母体効果の要因について、マウス受精卵の他系統母体への移入実験を行っている。方法論の検討と試行を重ね、正確な手法を確立しつつある。 (2)歯の成長に関与する遺伝要因:当教室で開発した歯胚成長量の体積量による成長評価法を用いて、6系統の近交系マウスによる3×3の部分的総当たり交雑実験を行い、生れたF1仔マウスの生後3ヵ日目から57日目までの象牙質形成量を算出した。そして歯の形成期間中に関与する遺伝と環境要因の経時的変化を調べたところ、出生直後より離乳期までは母体効果による影響が強く、以後次第に遺伝要因による効果が顕著にあらわれた。 (3)歯の大きさに関与する遺伝要因:歯の形態形成に関する遺伝的役割を解明するための総当り交雑法実験を行うに先立って、まず親の世代において10系統のラット間に歯の大きさの系統間差があるかどうかを明らかにすることとした。下顎右側第1,第2,第3臼歯の頬舌径及び近遠心径を三次元計測によって測定し、クラスター分析による解析を行ったところ、明らかな系統間差が認められた。
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