本研究の目的は生体の体表面の熱画像(サーモグラム)から、画像処理手法を用いて体表血流の分布画像を求め、さらに体表面血流を制御している自律神経、内分泌情報を得る方法を基礎的に検討するものである。 本年度は高速画像処理用スーパー・ミニコンピュータ Apollo DOMAIN DN 660を購入し、基礎的なサーモグラフィ画像処理システムを構築した。 1.サーモグラフィ画像入力 サーモグラフィ画像処理装置と16ビットパーソナルコンピュータを結ぶインターフェース・ボードを試作し、サーモグラフィ撮影装置から送出されるディジタル画像をパーソナルコンピュータで、一旦フロッピーディスクに転送し、これを本システムの入力とするバッチ入力が完成している。また、サーモグラフィ撮影装置から直接本システムに、ディジタル画像を実時間で転送するオンライン入力インターフェースを試作中である。 2.サーモグラフィ画像処理および表示 本システム上で、標準化サーモグラム法、時系列差分サーモグラム法、左右差分サーモグラム法、皮膚血流推定法等の各種画像処理法が試作された。時系列差分サーモグラム法により、皮膚血流分布経時変化の画像化が可能となり、これを解析することにより自律神経系の活動度を推定し得ることが確認された。また左右差分サーモグラム法を用いて体表面の非対称性を検出することにより、偏側性の痛みによる体表温異常分布の検出が可能となった。現在、これら体表温異常のメカニズム、あるいは体表温遷移における神経系関与の程度に関し、シミュレーション・モデルを用いて詳細に検討を加えている。
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