研究概要 |
絶食ラットの血中有機酸の動態を再検討した結果, 2ーbutenー4ーolide(2ーB4O)が内在性摂食抑制物質として血中に存在することが判明した. 2ーB4Oをラットに径口および腹腔内投与後, 摂食量が有意に減少した. しかし飲水量および行動量には有意差を認めなかった. この抑制機序を明らかにするため麻酔下ラットについて実験し, 特異的にLHAブドウ糖感受性ニューロンの活動を抑制し, 腹内側核のブドウ糖受容ニューロンの活動を促進させたことから視床下部が2ーB4Oの作用部位と考えられる. また2ーB4Oの静脈内投与で膵臓, 肝臓および副腎の交感神経の活動を上昇させたことから, 膵臓からのインスリン分泌の抑制, 肝臓でのグリコーゲン分解および副腎髄質からのカテコールアミン分泌の促進をおこし, 糖・脂肪代謝に与えていることが明らかとなった. 一方, 視床下部が自律神経系を介して横隔膜下臓器の活動を調節していることが知られており, また延髄骨内側運動核(DMV)は迷走神経の起始核として横隔膜下の諸臓器を支配していることから, 視床下部(LHA,VMH)の電気刺激に対するDMVニューロンの反応を調べ, その支配様式を検討した. LHAおよびVMH刺激は大部分のDMVニューロンにおいて興奮性初期応答(興奮型および興奮後抑制型)を起した. DMVニューロンのLHA刺激に対する応答潜時は, VMH刺激に比べて有意に短かった. 刺激に対する応答様式および応答潜時についてのこれらの結果は, DMVニューロンに対する視床下部の異なった部位からの調節作用が質的に等しく量的に異なった影響を与え, 腹部臓器活動の迷走神経性調節に重要な役割を役割を果していることを示唆する. したがって, 視床下部化学感受性ニューロンは, 末梢および延髄孤束核からの化学情報を受容・統合すると同時に, 下行性に自律神経機能を合目的に制御していると考えられる.
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