研究概要 |
ラット血中に同定にした3,4ーdihydroxybutanoic acid(3,4ーDB),2,4,5ーtrihydroxypentanic acid(2,4,5ーTP)および2ーbutenー4ーolide(2ーB4O)について、これらが内因性の摂食調節物質である可能性を検討する目的で、視床下部単ーニューロンに対する作用を検討した。3,4ーDBは視床下部外側野(LHA;摂食中枢)のブドウ糖感受性ニューロンの活動を抑制し、この抑制はウワバインの同時投与により消失したことより、ブドウ糖の作用機序と同様、NaーKポンプの活性化によると考えられる。このことは、脳切片標本を用いた細胞内記録実験より、3,4ーDB投与中膜は過分極するが膜コンダクタンスは変化しないことからも支持される。一方、3,4ーDBは視床下部側核(VMH;満腹中枢)のブドウ糖受容ニューロンの活動を促進するが、これもブドウ糖と同様K^+の透過性減少によるものである。一方、3,4ーDBを合成する過程で生ずる物質である2ーB4Oも内因性の物質であることが判明し、これは経口、腹腔内および第IV脳室内投与いずれの場合にも摂食行動を抑制した。また3,4ーDBと同様のメカニズムでVMHニューロンを脱分極した。これとは逆に2,4,5ーTPはLHAニューロン膜を脱分極させ、VMHニューロン膜を過分極した。以上、摂食行動実験から得られた結果と視床下部ニューロン群、特に摂食行動調節に重要な役割をはたす化学感受性ニューロンへの特異的な作用から、これらの物質は内因性の摂食調節物質である可能性を強く示唆する。
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