研究概要 |
ラット血中に同定した3,4-dihydroxybutanoic acid(3,4-DB)、2,4,5-trihydroxypentanoic acid(2,4,5-TP)および2-buten-4-olide(2-B40)について、これらが内因性の摂食調節物質である可能性を検討し、以下の結果を得た。1)、正常摂食下のラット血中濃度は3,4-DBは100μM、2,4,5-TPは230μM、2-B40は3μMであるが、絶食時3,4ーDBは40μM、2,4,5-TPは100μMおよび2-B40は10μM上昇する。絶食時の2,4,5-TPの濃度は絶食12時間後に大きく上昇し、いったん低下の後、再び上昇する。3,4-DBと2-B40の濃度は絶食36時間以降に上昇が見られる。2)、第III脳室内投与後の摂食行動を調べた結果、3,4-DB、2-B40は摂食抑制、2,4,5-TPは促進性に作用する。3)、視床下部単一ニューロンに対する作用を調べた結果、3,4-DBはLHAブドウ糖感受性ニューロンの活動を抑制し、VMHブドウ糖受容ニューロンの活動を促進した。これらの作用機構はブドウ糖と同様であり、LHAニューロンではNa-Kポンプの活性化、VMHニューロンに対してはK^+の透過性減少によるものである。これとは逆に、2,4,5-TPはLHAニューロン膜を脱分極させ、VMHニューロン膜を過分極した。2ーB40は3,4ーDBと同様のメカニズムでVMHニューロンを脱分極した。3)、横隔膜下迷走神経刺激によって同定したNTSおよびDMVニューロンに対する視床下部からの投射様式を調べた結果、LHA、VMHの電気刺激はNTSおよびDMVニューロンにおいて興奮性初期応答を示した。 以上の結果より、これら有機酸は内因性摂食調節物質として視床下部化学感受性ニューロンの活動を調節して摂食行動を制御するとともに、遠心性にも末梢臓器の機能の調節に関与すると考えられる。
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